変わりゆく行政書士業界
行政書士の数は増えているのに、少子高齢化で市場は小さくなっていく。
さらに司法制度改革で弁護士もこれまで主に行政書士が行っていた業務をはじめたり、
税理士が法人設立業務に積極的に取り組んだりと行政書士以外にも競争は広がり、激化している。
また、行政書士報酬もデフレが進み、働く時間が増えているという現状もある。
行政書士は専門家
確かに世の中はとても速いスピードで移り変わっている。
インターネットを使えば、誰でも各種契約書や定款の書式などを見られるし
役所の手引きなどもかなり充実してきている。
しかし、本人が付け焼刃の知識でなんとかなることはそれほど多くはない。
たゆみない努力をし、行政手続の専門家として研鑽を励んでいれば、
こうした難易度の高い手続きの部分でお手伝いできることは間違いなくある。
専門性を高めることにより、その業界の知識を前提としたコンサルタント的な業務を
行うこともできるのが行政書士の強みといえるだろう。
実際に筆者の周りで活躍している行政書士の多くが、それぞれの得意な分野、業界において、
書類作成以上にコンサルタント的な役割を担っている。
行政書士は時代の流れの中で活躍できる
世の中が変化していくと、人や企業はそれまでにはなかった困り事に遭遇することになる。
新しい事業を始める場合を考えてみよう。
それが前例がないものであれば、その事業を行うのにどんな手続きが必要なのか、何か許認可がなければいけないのか。
どこに聞いたらいいのかわからないという場合も考えられる。
以前はこれほどまでに外国人が日本で働く環境でもなかった。
しかし昨今の情勢の変化を受け、外国人労働者を取り巻くビジネスニーズは非常に高まっている。
このような時、行政書士は行政手続の専門家として力を発揮できるだろう。
常にアンテナを張り、「時代を見る目」を持つ行政書士、「先見性」を持つ行政書士が、今後は伸びる。
そもそも経営とは試行錯誤の連続、チャレンジすることなく、うまくいくことなどないのだ。
目の前の仕事に誠実に取り組みつつ、常に果敢に新しいものに取り組んでいく姿勢。
それさえあれば、どんなに世の中が変化しても行政書士は活躍し続けられるはずだ。
時代の変化に敏感に対応でき、自分の仕事を作りだすことのできる行政書士の展望は明るい。
予防法務も行政書士の強み
行政書士の強みは、他にも挙げられる。
例えば、「予防法務」である。
「予防法務」とは、将来において法的な紛争が生じないように、あるいは万が一法的紛争が生じた場合の損失を最小限に止めるため、法律知識や法実務上のノウハウを駆使して事前にふさわしい措置をとることである。
税理士は会社として利益が出た後で税金申告という処理を行う。
弁護士は、多くは裁判や紛争が起こってからが仕事だろう。
これに対して、我々行政書士は事前の手続が主な業務であり、行政書士の行う民事業務も多くは予防に関するものだ。
法的な紛争の解決手段としてまず頭に浮かぶのは「裁判」だろう。
ただ、現実に訴訟となれば、膨大な時間と多額のお金がかかってしまう。
だからこそ予防法務が重要であるし、行政書士がこの分野の専門家として果たす役割が大きいのだ。
今後ますます訴訟が増えてくると言われているが、同時に予防法務の重要性も更に増していくだろう。
行政書士はコーディネーター?
行政書士は非常に業務分野が広く、様々な手続きや業界に関わることができる。
その一方でお客様は誰に何を頼めばいいかわからないし、行政書士もそれらの手続きなどの全てができるわけでもない。
だからこそ自分の専門性を磨きつつ、自分にできない分野の専門家を紹介できる窓口になることが大事だし、その役割が求められている。
実際の仕事の上でも、お客様と役所、または利害関係者同士の間に入り、様々な調整を行っている。
産業廃棄物業務の中でも、施設に関する手続きだと、担当窓口も複数だし、調整相手も設備屋さんや土地所有者、建築、設計と多岐にわたる。
こうした時にしっかりとした進行ができないと、役割を擦り付け合ったり、情報を共有できていないがために時間をロスしたりということがある。
このような場合に、行政書士は書類作成だけではなくてコーディネートすることができるのだ。
もちろん他士業の業務が発生した時には自分が窓口となり、紹介することでスムーズに進行することができる。
お客様の業務の全体像を把握し、弁護士など各分野の専門家に適切に業務を依頼し、業務をスムーズに完遂に導く調整役、コーディネーターとしての役割ができるのは、業務範囲が広く、広範な知識を持つ行政書士が一番適しているのではないかと思う。